何にもなかった。5,000円で買った中古の餅つき機で生地をこねた。
コンパネで作った発酵室でパンを発酵させ、手作りのちっさい石窯でパンを焼いた。
たった3種類のパンを、直売所に持って行って売った。
あれから20年が経ち、ずいぶんたくさんのパンを焼くようになった。
スタッフも増えた。機械もそうとう増えた。でも、蓮三のパンは変わっていない。
全部のパンを、自分で育てた酵母だけで発酵させて焼いている。
イーストは一切使わない。蓮三だけのパン。素朴で飽きの来ないパン。それが蓮三の目指すパン。
これからもずっと、毎日種を起こし、毎日石窯に薪をくべてパンを焼いていくつもりだ。
イーストに負けない発酵力と、イーストにはないおいしさを求めて。